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06 06

女性の視点から考えるまちづくり

2024年の市制100周年に向けて、川崎のブランドメッセージである「Colors,Future!いろいろって、未来。」のもと、行政・市民・企業・団体等が共に新しい川崎を考えていく
まちづくりイベント『Colors,Future!Summit 2023』を開催。女性の視点から考える、ジェンダー平等、多様性のまちづくりとは。さまざまな分野で活躍する女性たちが登壇し、目指すべきまちづくりの未来について議論しました。

  • 高橋幸(石巻専修大学 准教授)

    高橋幸
    (石巻専修大学 准教授)

    1983年生まれ。2014年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。現在、石巻専修大学准教授。専攻は社会学、専門はジェンダー論。主著に『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど--ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』(2020、晃洋書房)。共著に『離れていても家族』(2023、亜紀書房)などがある。

  • 呉京美(株式会社CSD 代表取締役社長)

    呉京美
    (株式会社CSD 代表取締役社長)

    2021年にかわさきSDGsゴールドパートナーに認定された、電力系統、鉄道、再生可能エネルギー分野に力を入れている川崎IT企業(株)シーエスデーの代表者取締役社長。学生時代にMBA留学し、公認会計士として米国で25年以上勤務。グリーンな街つくりをテーマに地域の企業、団体、行政、スポーツチームを応援し、安心、安全、楽しい持続可能な川崎を目指して、地域社会に貢献していきたいと考えている。

  • 高橋陽子(ダンウェイ株式会社代表取締役)

    高橋陽子
    (ダンウェイ株式会社代表取締役)

    数社の企業総務・人事を務めた後、息子の障害をきっかけに、2010年社会保険労務士事務所を開業。障害者を取り巻く大きな社会的課題解決のため、2011年ダンウェイ㈱を設立。障害者の能力の可視化を行う、キャリアサポートカルテ「シームレス バディ」を開発。さらにインテル㈱と協働し、「ICT治具」を開発。中小企業支援と同時に障害者の新たな職域拡大を目指す。2016年度全国商工会議所「女性起業家大賞」受賞。

  • 松尾実里(ストーリー株式会社代表取締役)

    松尾実里
    (ストーリー株式会社代表取締役)

    女性・ママの社会復帰の環境を整えたいとストーリー株式会社を設立。川崎の企業と川崎のママの橋渡しを行う企業として、経済労働局と働き方改革モデル事業や在宅ママさんの雇用の場を広げる為にママのオンラインスクール、保育事業の立ち上げなどを川崎市内で展開。生まれ育った川崎がよりよい街になるよう日々ママの支援をおこなっています。

ママさんの活躍と、障がいのある方の雇用創出について。

ー女性の社会進出や男女格差の解消が進む今、実際にどのような取り組みが行われているのか。石巻専修大学で准教授を務める、高橋幸さんの進行のもと、まずは松尾さんと高橋陽子さんから自己紹介をしていただきました。

高橋(幸):

このセッションでは、各領域で社会課題の解決に取り組んでいる素晴らしい経営者の3名の方と共に、これからの川崎のまちづくりについて、多様性やジェンダーというキーワードを軸に議論できればと思います。まずは、登壇者のみなさんから自己紹介をしていただきましょう。マイクをお渡しする前に、私自身についても軽く紹介させてください。私は社会学の中でもジェンダー論を専攻し、「第4派 フェミニズム」と呼ばれる最近のフェミニズムやポストフェミニズムを研究しています。行政の取り組みは、専門的であればあるほどどうしても縦割りになってしまうことが多いのですが、今日は皆さんのお話をもとに、総合的な視点でこれからの社会への見通しを共有できればと思います。よろしくお願いします。それでは、御三方の紹介に入りましょう。まずは松尾さんのお話を聞かせてください。

松尾:

今日はよろしくお願いします。川崎の企業と川崎のママさんの橋渡しを行う企業である、ストーリー株式会社の代表取締役を務める松尾と申します。川崎北部を中心に、ママさん雇用の推進を手がけております。私自身、川崎市の多摩区で生まれ育ち、今も川崎で子育てしているんです。生まれ育った川崎がより良いまちになるよう、もっとママの社会復帰の環境を整えたい。そんな想いから会社を立ち上げ、働き方改革モデル事業や在宅ママさんの雇用を広げるためのオンラインスクール、保育園の立ち上げなどを行っています。また、今年「ミライアルかわさき」という団体を立ち上げ、音楽と絵本を通して、社会課題を発信するという取り組みも手がけています。例えば、コンサート活動を通じて医療のエコ活動の普及を行ったり、川崎フロンターレさんと一緒に献血イベントを行ったり、ママさんたちが企画・運営を手がける子育てイベント「まんなかフェス」を開催したり……と、活動内容は多岐にわたります。今日は皆さんとセッションできるのを楽しみにしていました。ママさんたちが働く環境が少しでも整っていくよう、多様な視点から意見交換できると嬉しいです。

高橋(幸):

興味深い取り組みをたくさんされていて、もっと詳しくお聞きしたくなりました。このセッションの後半で、実際にママさんの働き方がどう変わっていくのか、変えていくべきなのかというお話ができればと思います。それでは次に、高橋洋子さんお願いします。

高橋(陽子):

ダンウェイ株式会社の代表取締役をしております、高橋と申します。元々のキャリアとしては、総務・人事系の仕事を3社ほど経験してきたのですが、息子が3歳のときに、最重度の知的障害である自閉症スペクトラムの診断を受けまして、そこからキャリアを大きく転換させていきました。正直、診断を受けた当時はかなりショックでして。どんどん殻に閉じこもってしまう時期が続いたのですが、たくさんの方の支えがあり、なんとか前を向くことができました。障がい者を取り巻く課題は非常に大きい。一か八か、自分の経験を活かしてその課題を解決していきたい。息子を含む、多くの障がい者の秘めた能力を開花させたい。そんな思いから、会社を立ち上げるに至りました。現在、障がいがある方の能力を見える化するツール「シームレスバディ」を開発し、就労支援等の現場でのトレーニングや、雇用のマッチングのフォローを行っています。

松尾:

雇用の創出を考える上で、採用することはもちろん、その後定着させることが大切だと思うんです。その上で今のお話を聞いていて、私たちがサポートしている短時間雇用のママさんたちと、高橋洋子さんの「シームレスバディ」を掛け合わせることで、よりマッチング率が高まるんじゃないかと思いました。

高橋(陽子):

ありがとうございます!たしかに、ママさんたちの能力の可視化ができれば、チャレンジの後押しになるかもしれないし、自分に合った職場を見つける手段にもなるかもしれない。私も同じようなことを考えていたのですが、やろうやろうと思いつつ手が回っていなかったので、これを機にぜひ一緒に考えていただけると嬉しいです。来週にでも伺います!笑

松尾:

ぜひ!お待ちしております。

他国との比較から考える、地域の人々との「つながり」と子育てのあり方。

ー次に、かわさきSDGsゴールドパートナーである株式会社CSDの代表取締役社長 呉さんの紹介に移りました。

呉:

株式会社CSDの代表取締役社長をしております、呉と申します。生まれも育ちも東京都大田区で、その後アメリカに行き、公認会計士として25年以上暮らしていました。日本に帰ってきたのは2019年で、浦島太郎状態といいますか、当時は歌手や芸能人の名前が一人もわからなかったです。そんな立場だからこそ、アメリカと日本を比較し、客観的視点から社会課題の解決を考える日々を送っています。現在は、父の跡を引き継ぎ、IT企業であるCSDの代表取締役社長を務めています。多くの電力会社の電力供給システムの中枢を担う、系統監視制御システムの開発を大きな柱とし、再生可能エネルギーやスマートグリット、EVを活用したソリューションの開発も進めています。環境ソリューション事業に力を入れるようになったのは、元々福島に太陽光発電所を有していたこともあり、東日本大震災後の福島の復興に貢献したいと思ったのがきっかけです。その後、2019年に起きた千葉の大停電でも、道の駅むつざわのスマートウェルネスタウンで、エネルギーのマネジメントシステム(EMS)を供給し、地域の皆様のライフラインとして機能した経験から、地域貢献に着目するようになりました。こうした経験を活かして、他の地域にも同様のエネルギーシステムが構築できるのではないか、そう考える中で川崎の富士見地区に目を向け、川崎市内の中小企業と協力し、経済産業省の補助金を活用して再生可能エネルギーを活用した分散型のマイクログリッド構想のマスタープランを受託しました。現在は、溝ノ口エリアで「まちの植育」など緑化の活動で、子ども向けのイベントを行ったり、脱炭素循環型ライフスタイルの向上を目指す「エコシティ川崎フェス」というイベントを生活クラブのママさんたちと行ったりなど、他団体とコラボしたイベントも多数開催しています。こうした活動を通じ、今後も地元の川崎をより楽しいくワクワクするまちへ支援を続けていきたいと思っています。

高橋(幸):

環境ソリューションに注目したのが、今やまちづくりや子育ての分野にも活動領域を広げていらっしゃるんですね。

呉:

先ほども話したとおり海外での生活が長かったので、他国と比較した上で、日本のまちづくりはもっと改善できる、もっと子育てしやすい環境をつくることができるはずだという思いがどんどん強くなるんですよね。特に子育ては大きなギャップを感じます。例えばアメリカでは、保育園が17時には閉まってしまうので、パパとママ両方が仕事を17時には終わらせます。また、ご近所さんとバーベキューパーティーをしたり、集会で地域の人々に相談に乗ってもらったりなど、地域の人との交流も深いのが特徴です。公園で何をするでもなくみんなで寝そべり、読書をしたり昼寝をしたりなど、思い思いの過ごし方をする光景なんかもよく見られます。一方の日本では、子どもに何かあったときはママが優先して呼ばれたり、隣に住んでいる人を知らないなど、アメリカとは異なる点が多い。このままじゃいけないという危機感もあり、さまざまな活動に力を入れるようになりました。

高橋(幸):

パパも17時には帰宅するんですね…!私も以前イギリスで調査を行ったことがあるのですが、皆が揃ってから夕飯の支度をして、一緒にご飯を食べるのが当たり前であることを知り、衝撃を受けたことを思い出しました。

松尾:

アメリカでは、子育て世代以外の方々も17時頃に仕事を終えて帰るんですか?

呉:

子育てだけでなく、仕事終わりにスポーツをしたり、観戦に行ったりするので、年齢に関わらず皆さん早く帰られますね(笑)。日本でも働き方改革が行われている他、雇用の形が多様化してきているので、きっと近い未来、日本もその方向に変わっていくのではないかと期待しています。

まちづくりの肝は、ソフトでの学びをハードに反映させていくこと。

ー今後の川崎のまちづくりに向けてどんな取り組みを進めていくべきか、どう変わっていくべきか。最後に、登壇者一人ひとりのまちづくりに対する意見を共有しました。

高橋(幸):

具体的に、今後川崎でどのような取り組みをしていきたいか、今日のセッションを踏まえて、皆さんの意見を教えていただきたいです。ちなみに私は、先ほどの呉さんのお話を聞いて、せっかく溝の口で緑化政策を進めているので、誰もがもっと自由に過ごせるように変えていけるといいのかなと思いました。現状はかなり規制が厳しいですが、丁寧に合意をとって進めていけば、より魅力的なまちに変わる可能性があると思います。

呉:

それは素敵ですね!私も同じようなことを考えていて、子どもたちが遊べる環境を住宅街に作り出したいんです。道も楕円形にするなど、遊びが生まれる仕掛けができるといいのかなと。

松尾:

私は、子どもたちの送迎システムを作ってほしいです。今の子どもたちって、忙しいぐらいたくさんの習い事をしている子も多いんですよね。それが、一家に子どもが2~3人いると、送迎だけで一気に時間を取られてしまう。だからといって子どもを一人で行かせるのは不安。そのせいでキャリアを諦めてしまうママさんもいるほどです。この送迎問題を、システムを作って解決できれば、ママさんのキャリアを支えるだけでなく、家庭の雰囲気の向上にもつながる気がするんです。

高橋(幸):

他の団体を巻き込んで、ぜひ仕組み化を進めていきたいですね。

高橋(陽子):

障がいの有無に関係なく誰もが多様な働き方ができる社会を、「Colors,Future!」を掲げる川崎が先頭に立って進めてくれたら嬉しいです。障がいとは、個々が「持つ」ものものではなく、環境要因によって「ある」ものなので、環境を変えれば、障がいを無くしていけるはず。大きく言えば、障がい者という概念を無くす社会を目指していきたいです。そのために私自身、尽力していければと思います。

高橋(幸):

会場の皆様の中で「自分もその取り組み手伝いたい!」と思った方がいたら、ぜひ教えてください。規制さえクリアできれば、実装化はすぐに進められるはずです。一緒によりよいまちをつくっていきましょう。皆でコラボレーションすれば、きっと川崎をもっと元気にしていけるはずです。

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