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07 07

食のまちづくり

2024年の市制100周年に向けて、川崎のブランドメッセージである「Colors,Future!いろいろって、未来。」のもと、行政・市民・企業・団体等が共に新しい川崎を考えていく
まちづくりイベント『Colors,Future!Summit 2023』を開催。このセッションでは、多摩の自然や文化によって育まれ、受け継がれてきた川崎の「食」がテーマとなりました。新旧の名物フードや食への取り組みから、川崎の食の未来を考えます。

  • 福田紀彦(料理評論家)

    山本益博
    (料理評論家)

    1948年4月11日。東京・浅草出身。早稲田大学卒業。1982年に寿司や天ぷら、ラーメンなど東京の食を格付け批評した『東京・味のグランプリ』、また1984年には『グルマン・東京フランス料理店ガイド』を上梓。日本のレストランガイドのパイオニアにして、その後のグルメブームのリーダー的存在となる。日本におけるフランス料理の普及に貢献した功績により、フランス政府より2001年に農事功労勲章シュヴァリエ(Merit Agricole chevalier)、2014年に農事功労勲章オフィシエ(Oficier)を受勲。

  • 山本美賢(株式会社ノクチ基地 代表取締役 / 公益財団法人かわさき市民しきん理事)

    山本美賢
    (株式会社ノクチ基地 代表取締役 / 公益財団法人かわさき市民しきん理事)

    2018年、「クリエイティブの地産地消」を旗印に市内のクリエイターとノクチ基地を結成。川崎市内の企業、公共のコンテンツを制作。現在は市内の生産者、飲食店と連携しながら「かわさきAKINAI AWARDかわさき推しメシ」や「川崎夜市」の企画・運営にも携わる。溝の口在住。

  • 丸山佑樹(YMP inc / ten inc. 代表)

    丸山佑樹
    (YMP inc / ten inc. 代表)

    「共創」をテーマとし、地域に根ざした多角的な事業を展開。TETO-TEO/Len/ノクチラボ等の直営事業の他、地域共創イベントの企画制作等を行う。リアルコミュニティサロン”SALOON”や、まちの企画室やWORLD CAFEを通し、街づくり事業、コミュニティ事業、創業支援プロジェクト等を推進している。

  • 森明弘(株式会社住吉 代表取締役)

    森明弘
    (株式会社住吉 代表取締役)

    大正6年創業の老舗和菓子店「川崎大師山門前 住吉」5代目。住吉は川崎大師の定番土産「久寿餅(くずもち)」の製造販売でも知られる。川崎大師観光協会専務理事、川崎宿起立400年プロジェクト推進会議など数多くの地域振興に携わりながら、地域と連携した商品開発にも取り組んでいる。

  • 三浦宗丈(Colors,Future!Summit2023ジェネラル・プロデューサー)

    三浦宗丈
    (Colors,Future!Summit2023ジェネラル・プロデューサー)

    1978年生まれ。ブランドの課題解決ではなく、可能性創造をリードするブランドエンジニアリングスタジオ EVERY DAY IS THE DAYのプロジェクトデザイナー、クリエイティブディレクター。2016年、川崎市のブランドメッセージ「Colors , Future!いろいろって、未来。」を開発以降、市の様々なブランドプロジェクトに従事。川崎市在住、2児のパパ。

食にまつわる取り組みは三者三様。

ー川崎では食に関するさまざまなイベントやプロジェクトが進行中。CFSのプロデューサーの三浦さんを進行役に、事業を手がける3人にそれぞれの取り組みをうかがいました。

三浦:

山本美賢さん、丸山さん、森さんは川崎の食に関するビジネスや事業、取り組みをしている御三方です。まずこの御三方がどんな取り組みをしているか、ご紹介いただこうかなと思います。山本さんからお願いします。

山本(美):

溝の口にあります、ノクチ基地という企画デザイン制作会社をしております山本です。東京で広告会社を20年やっていたんですけれども、「クリエイティブの地産地消」として還元したくなり地元沿線の仲間と一緒に会社を作りました。福祉や教育、防災減災、都市型農業や環境など、クリエイティブをやるなら地元の課題解決や魅力向上を仕事にしようと、そういう軸で仕事をしています。もう一つの指標としては、「地元で『働く』『暮らす』『遊ぶ』」ですね。自分たちの住んでいるところに貢献し、家族や仲間を近くで見守りながら、自身の成長と経済的にも「やりがいのある仕事」をしていく。子どもに「あれ父ちゃんたちが作ったんだぜ」と言える仕事、それを目指しています。5年でさまざまなお仕事をしてきましたが、食に関するイベントでいうと「川崎夜市」ですね。2022年から開催しているイベントで、飲食店のみなさんには屋台として出店してもらったり、会場近辺のお店には飲み歩きできる店として参加してもらったりしています。やり取りの中でお店の人のいろいろな思いが伝わってくる、こちらとしてもとても勉強になるイベントでした。それから「かわさきAKINAI AWARDかわさき推しメシ」と称して、エントリーした飲食店の中から投票で1位を決めるイベントも実施しています。今年はさらに11月18日から25日まで、脱炭素グルメをテーマにした「まるっとサステナグルメWEEK」を開催します。飲食の分野で関わる人を増やしたいなと思いまして、飲食店さん、生産者さん、子どもも大人も楽しんでご参加いただければと思います。

三浦:

ありがとうございます。それでは続いて丸山さん、お願いします。

丸山:

改めまして、丸山です。私は「共創」をテーマに掲げておりまして、生産者さんやさまざまなパートナーとともに新しい価値を作っていくことをコンセプトにしています。今回の川崎100周年イベントも「まちづくりをみんなでしよう」という「共創」ですので、大変共感しています。7年前に川崎に来て最初に創業したのはカフェ「TETO-TEO」ですね。生産者さんと「手と手を」取ってというのが名前の由来で、健康的な定食やドリンク、スイーツを提供しているんですが、基本的には川崎産の地元で採れたものを使っています。事業は他にもありまして、溝の口にある豊かな暮らし研究所「ノクチラボ」は1階が売り場、2階がお菓子などの工房という複合施設です。これからお店を開業したい人に向けたトライアルで営業ができるシェアスペースで、開業支援に向けたプログラムも用意しています。川崎はここ数年で受けられるサポートも充実してきたので、都内で出店するよりもスタートしやすいと思っています。また「ノクチラボ」では夜間に「SALOON」というサロンを企画しています。経営者同士のコミュニティサロンや音楽サロンといった、何かにフォーカスしてコミュニティを作り、科学反応が生まれることを期待して実施していますね。メインでやっている事業には「Len」もあります。Local(地元)、Eat(食)、Neighborhood(近隣地域)をキーワードに、地元の方々と連携したパンやお菓子などを製作しています。また「循環と持続性」も大切にしていて、農家さんが摘果によって廃棄してしまう野菜や果実を酵母にしてパンを作るなどもしています。今年は新たに千葉県の南総房市でも事業を展開したので、川崎の価値と南総房の価値を交流させるような活動もしていきたいと考えています。

三浦:

ありがとうございました。お待たせしてしまいましたが、森さんお願いします。

森:

住吉の森と申します。住吉では久寿餅の販売を主としています。久寿餅は川崎大師の土産物として参拝に来られたお客様に向けて販売していますが、川崎大師のある南部から離れていくと川崎市内でも久寿餅を知らないという人が多くいます。事業継承の関係で久寿餅の生産者や販売者も少なくなりつつあり、川崎大師にもっと人を呼ぶためにと挑戦を重ねました。そのときは他の商品を製作していたんですが、自分たちで作っている久寿餅を川崎の名物として認知してもらわないといけないと、久寿餅をアレンジして宣伝していこうと考えを改めました。あんこと一緒に久寿餅を食べてもらうメニューを開発し、季節の花のかたちで彩ったデザートが若い方から人気になりつつあります。川崎大師に来られる方も新しいものを求めてはいるんですが、今あるものを残し、活かしていくかという方向でも対応していければと思っています。

三浦:

みなさんのお話に共通しているのが、川崎の土地にあるものをどう活かすか。食の分野ではそれが求められているなと強く感じますね。

食のスペシャリストが選ぶ「推しメシ」は?

ーここに集まったのは、食にこだわりを持つスペシャリストたち。そんなスペシャリストたちが推したくなる川崎グルメ、「推しメシ」について聞いてみました。

三浦:

ここからは少しカジュアルにですね、食のスペシャリストが選ぶ「推しメシ」についてご紹介いただければと思います。私も15年前に溝の口に引っ越してきたんですが、地元の美味しいお店というのは最初なかなかわからなくて。人づてに聞いて「こんなお店があったんだ」というのがまだまだあると思うんですけれども。

山本(美):

僕は2つあるんですが、1つは「三ちゃん食堂」ですね。川崎を体現するかのような飲み屋兼町中華。ハムエッグを堂々と推しメニューにしちゃうようなお店なんですけど、ラーメンとか天津麺とか出てくるものは何でも好きです。もう1つは「Francais La Porte」という「かわさき推しメシ」で昨年1位を獲ったお店。地元産の食材をクリエイティブな料理にして提供してくれています。こちらが何かしたいと言うと想像以上のクオリティで返してくれるので、川崎の誇りかなと思っています。

森:

私は「エルム」と「丸大ホール」です。「エルム」は川崎区小川町にある老舗の洋食屋さんですね。タンシチューや、ステーキハウスなのに蟹サラダも美味しいんです。「丸大ホール」は川崎の駅前にある飲み屋さんなんですが、ザ・川崎といわれる朝から営業しているお店でして。ハムカツとかオムライスとか、何でも普通に美味しくて、ぜひ足を運んでいただけたらなと思います。

山本(益):

今の「普通に美味しい」というのが非常に大事だと思うんです。知り合いのラーメンスペシャリストから「川崎に行くならここに行かないと」という情報をもらっていてですね。「手打ち中華そば 酒田」、「中華そば やなぎや」、「麺匠ようすけ 鶏煮亭」、「麺処 まがり鶏」、「麻婆まぜそば 麻ぜろう」、あとは昔から有名な「元祖ニュータンタンメン本舗」。まだ行けてはいないんですが、川崎のラーメンは見逃していたのでどれだけ時間がかかっても行ってみたいですね。

丸山:

私はお店というよりスポットなんですが、「北部市場」ですね。ここ1、2年くらいで飲食店が変わっているんですよ。「調理室池田」というお店が3年ほど前にできたのがきっかけで、最近だとベトナム料理屋やワイン屋さんができて面白い体験ができる場所になっています。料理も海鮮を使ったそこでしか作れないものをリーズナブルに、けれど時間は市場なので午後1時には終わってしまうという。その限定感は今の時代に合っていていいなと思い、挙げさせていただきました。

三浦:

ありがとうございます。みなさんもぜひ足を運んでいただきたいなと思います。

食材を活かすことは、まちを活かすこと。

ー終わりに差しかかって、丸山さんからとあるお菓子が配られました。地産地消という言葉から、食でまちを盛り上げることについて考えます。

三浦:

今日は丸山さんからお菓子のご用意がありましてですね。「FARM TO GIFT」というプロジェクトについてご紹介いただいてもよろしいでしょうか。

丸山:

「FARM TO GIFT」は「Len」で展開している取り組みですね。こちらは「農園からの贈り物」がテーマで、川崎の生産者さんとともにギフト作りをしています。イチゴ、のらぼう菜、トマト、多摩川梨と展開し、最新はイチジクを使ったお菓子。川崎には焼き菓子のギフトがあまりないので、それを作りたいというのがまずありました。それから農作物は日持ちしないのでギフトになりにくいという問題を解消するためでもあります。あとは6次産業化、農産物の加工販売の一元化をやりたいけど農家さんだけではやりにくいというところに手助けをして、川崎として誇れるものを作っていこうというのも意識しています。川崎にはこういう農家さんがいる、こういうこだわりを持った人がいるという物語を簡単な冊子にして贈り、川崎の魅力を消費者の方も共感していただくという目的でやっています。

三浦:

ありがとうございます。山本美賢さんのお話では料理人を繋ぐネットワークをどう構築するか、丸山さんのお話では生産者とどう繋がっていくか、森さんのお話では今まであった資産をどう今らしく変えていくか。お話を聞いていると進化の仕方はたくさんありそうだなとヒントをいただきました。

山本(益):

今日のお話をうかがって、2つ感じることがありました。現在、日本人の料理人のほとんどが食材探しに奔走しています。「誰が作った」という情報を重視しているのもそうですし、何よりいいものを探そうとするのは料理人にとって当たり前です。それよりも、僕は川崎から食材よりも人材を発掘したいです。天才名人が川崎にいるなら僕は飛んで川崎に来ますよ。料理のスペシャリスト、その人に会いたい。料理の向こう側に人がいる。今日のお話からはそれを感じました。感じたことの1つが食材より人材だということ。もう1つが地産地消。僕はこの「消」という字があまり好きじゃない。僕が言い換えるなら地産地「活」、活かすことに重点を置く。今日のみなさんは食材を活かしていて、消耗したり消費したりというイメージはないです。今後アピールしていくのであれば、地産地活という言葉を使っていくのもどうかな、と思います。

三浦:

未来作りのアクションとして打ち出していくということですね。では最後に御三方から一言ずつお願いします。

山本(美):

他のみなさんがやられていることは食を通じた川崎のブランディングだと思うんですけど、食べたり取り上げてくれたりして川崎以外の方が関わってくるとどんどん面白くなっていく、活性化していくのかなと。エリアの中だけでなく他の地域とも交流するという、広い視野に向かっていきたいです。

丸山:

国外にはシェフたちが技術やレシピをオープンにする美食クラブという文化があるんですね。川崎の「共創」の一つとして、シェフたちが自分のやり方を共有する、それ自体がイベントになると思うんですよ。シェフたちはもちろんお客様も参加して盛り上げていける、まさにまちづくり的な観点が生まれるんじゃないかなと思います。

森:

やはり川崎というまちをもっと知っていただきたいです。川崎にはこういう美味しいものがあるというのを宣伝する。お客様が喜んでもらえるような、伝統にあぐらをかかない姿勢で物事を作っていけたらなと感じています。

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